『コート掛』が完成しました

年明けから製作に取りかかった 『コート掛』 が完成しました。

「事務所で使用する ”コート掛” を」 とのご相談を最初に頂いたのが昨年6月の淡路での展示会のときですから、あしかけ9ヶ月目での完成ということになります。

最大5人分のコートが掛けられること、他の調度品と調和がとれるよう仕上は拭き漆で、などのご希望をお聞きし、デザインなどのアイデアをじっくりと練り上げていくことになりました。

ご相談や打合せを重ねた結果、設置場所の関係から自立式ではなく、壁に固定する壁掛式とし、四角に整形した板にフック金具を取り付ける、という方向で、いったん計画はまとまりました。

ところがその後、別の目的で材木を整理していた際に、「今回のコート掛にピッタリでは?」 と思われるケヤキの一枚板が目に留まりました。

自然のままの形のバランスがよく、シンプル過ぎず、それでいてうるさ過ぎもせず、この形を活かせば、ありきたりではない、独特のコート掛 になるのでは、と感じました。

また木目も、よく詰まった、全体的には素直な木目なのですが、端の方や節周りには複雑で面白い木目も見られ、漆を塗って仕上げたらとてもきれいになりそうだと思いました。

念のため、お客様に材木の確認をお願いし、OKを頂いたうえで製作に取りかかりました。

その後、折に触れてこのブログでご報告させて頂いていたように順調に作業は進み、先日金具を取り付けて無事完成に至りました。

完成した”コート掛”
完成した”コート掛”

金具は千鳥に配置し、メインの上の3つは大きめの金具、サブの下の2つは小さめの金具としました。

節周りの状態
節周りの状態

自然のままの形を活かすため、刃物でざっくりと仕上げた端部もきれいに仕上がりました。

複雑できれいな木目
複雑できれいな木目

拭き漆仕上は木目が引き立つのが特徴ですが、複雑な木目の部分では、特にその美しさが際立ちました。

完成した”コート掛”の裏面
完成した”コート掛”の裏面(金具取付前)

コートが掛かることを考え、少しでも重量を軽くするために、裏面は大きくはつりました(これで3kgほど軽くすることができました)。

漆がしっかりと乾くのを待って先週お納めしたところ、早速取り付けて写真を送って下さいました(取り付けはお客様にお任せしました)。

設置された”コート掛”
設置された”コート掛”

白い壁に漆の色がよく映え、書棚などとの調和もとれ、とてもよい感じで納まっている写真を拝見して安心しました。

お客様もたいへ ん気に入って下さり、「ぴったりで素敵な空間になりました」 との、たいへん嬉しいお言葉を頂きました。 ありがとうございました。

設置された”コート掛”
設置された”コート掛”

春は確実に近づいているようですが、もうしばらくはコートが必要なようです。たいへんお待たせしましたが、なんとか 『コート掛』 を活用して頂ける時期にお納めすることが出来てホッとしています。(Ku)

未知との遭遇?

謎の影
謎の影

長~く伸びる2つの影。

これはいったい……?

詳しくは、また来週。

漆塗り作業
「コート掛け」の漆塗り作業

製作中の 「コート掛け」 は、2週間ほど前に漆塗り作業が終了し、現在 ” 室(むろ)” の中でじっくり乾燥中です。

” 漆はかぶれるのでは?” と思われる方も多いと思いますが、しっかり乾燥した漆製品でかぶれることはありません。

塗る前の ”生漆(きうるし)” は、ベージュ色をした、とんかつソース 位の粘り気のドロッとした液状で、これを木地に塗るのですが、この 乾燥前の ”生漆” が素肌に付くと大変な目にあいます(希にかぶれない体質の人もいるそうです)。

体も慣れてきたのか、最近はひどくかぶれることはなくなりましたが、私は以前、腕がパンパンに腫れて皮膚科にかかったことがあります。

思わず「それを注射するんですか?」と聞いてしまったほどの、針が中心より端に寄った位置から出ている、それはそれは太い注射器が目の前に…。

さすがにすっきり治りましたが、テレビで見たことのある、獣医さんが牛にしていた注射にそっくりで、かなりおっかなびっくりの治療でした。

お客様をそんな目にあわせては大変と、拭き漆仕上の場合は、充分に漆が乾いてから納めさせて頂くことにしています。

そんなこともあって手間暇のかかる拭き漆仕上げですが、その分出来上がりの美しさは格別です。

近日中に金具を取り付けて、完成した「コート掛」をご紹介させて頂く予定です。ご期待ください。(Ku)

『コート掛』の製作

年が明けてはや3週間が経とうとしています。

毎年のことですが、年明けしばらくは、伝票や書類に記入する日付の ”年” の部分を悩んだり、間違えたりしてしまいます。

今のところはまだ意識して書いているのでよいのですが、もうすこし経つと油断が出て、”年” の箇所に修正印を何遍か押すことになります。今年も多分…。

さて、現在工房では、 『コート掛け』 の製作の真っ最中です。

ベースとなるケヤキの一枚板
ベースとなるケヤキの一枚板

ケヤキの一枚板に金具を取り付け、最大5着のコートを掛けることができる、大きな壁掛け式のコート掛けです。

現在、大まかな板削りが済んだところで、これから重量を軽くするために、裏側をはつる作業に入ります。

出来上がりましたら、またご報告させていただきます。

今年の私たちの展示会シーズンの幕開けは、4月になります。それまでじっくり、今までにご注文頂いているものの製作や、展示会用の新作の製作に取り組む予定です。

今年の展示会の予定につきましては先日、ホームページの『展示会案内』を更新いたしましたのでご参照ください。

確定申告の準備もしなければ…。(Ku)

座卓の製作 -その2-

先週に引き続き、座卓製作のご報告です。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)表側

座卓用の材木の状態をさらに詳しく確認し、キズの少ない面を表側にすることにしました。

座卓用の材木の裏側
座卓用の材木の裏側

裏面には割れが長く伸び、部分的に表裏を貫通していました。また、割れの周辺には深い部分まで傷みが拡がっていました。

割れの周辺に拡がった傷み
割れの周辺に拡がった傷み

黒っぽく変色している部分は、朽ちたように脆くなっており、指で触ると簡単に崩れてしまう状態です。

このままでは今後長くご使用頂くうちに、ボロボロと崩れ落ちてしまうなどの支障が出てしまうので、痛んだ部分は削り落とす必要があります。

虫食いの穴
虫食いの穴

割れやキズの他、虫食いの跡の穴も多数みられました。

お客様に、板の状態をご報告するとともにいくつかのご希望をうかがい、次のように製作を進めることになりました。

・脚はこれまで板を載せていた角材を、脚として再び使用したい。
→ 座卓の天板部分を製作し、それを角材の上に載せる。
・天板の大きさ、形はできるだけ元のままで使用したい。
→ 寸法は変えず、シルエットを柔らかくするために側面にのみ緩いアールを付ける。
・使い勝手が良いように、表側はキズ等を埋めて平らにして欲しい。
→ 割れや傷みを漆等で埋めて平滑に仕上げる。
・裏側はキズは残って構わない。
→ キズや傷みが拡がったり崩れたりないように処理し、自然に仕上げる。
・高さはこれまでと同じに。
→ 板の裏側に、板の反りを防ぐとともに補強の役割りもある ”反り止め” を取り付け、それと井形に組んだ ”幕板” の高さで座卓の高さを調整する。
・仕上げは拭き漆仕上げで。
(仕上げについては、キズを漆で埋めることに加え、12,3年前に、肥松に漆を塗って作った小刀のサヤが、現在とてもよい色つやになっていることもあって拭き漆仕上げをおすすめしました。)

最大の問題は、板の中心を貫く大きな割れの処理でした。

持ち上げると割れに向かって板がたわみ、板を動かす度に、2つに割れてしまうのではないかとドキドキしました。

単に割れを埋めるだけでなく、埋めることによって板に強度もでるような処理が必要でした。また、貫通してしまっている箇所をどうやって埋めるか、などなど…。

出来上がった座卓の表面
仕上がった座卓の表面

2人で知恵をしぼり、試行錯誤の末にキズを埋め、ご希望に沿うような状態にすることができました。

出来上がった座卓の裏側
出来上がった座卓の裏側

裏側に取り付けた ”反り止め” と ”幕板” は、栗材です。

長手方向の ”幕板” が脚の角材に直接載ることになります。

納品した座卓
納品した座卓

板の下に見えているのが、脚の角材です。

工房ではかなり存在感のある座卓でしたが、納品した瞬間から、落ち着いた雰囲気でお部屋にしっかりと馴染みました。さすが、元々あった場所ですね。

大人2人で移動できる重さになったことに加え、仕上がりの状態もとても喜んでいただきました。ありがとうございました。

さて、この猛暑の中、木曜日から我が家の冷蔵庫の冷蔵室がほとんど冷えなくなってしまいました。

冷凍庫は正常に機能しているのですが、どうも冷蔵室に冷気が回っていないようです。取り急ぎ、保冷の必要なものだけクーラーボックスに避難させてしのいでいましたが、何もかもが生ぬるく、暑さをひときわ厳しく感じました。

今日、メーカーの人に応急修理をしていただき、なんとか復旧しました(水曜日に部品交換の予定です)。

たった2,3日の不便でしたが、冷蔵庫のありがたさを改めて感じました。(Ku)

座卓の製作 -その1-

今週と来週の2回に分けて、先日納品した座卓についてのお話しをさせていただきたいと思います。

半年ほど前、お世話になっている岡山のギャラリーのオーナーさんを通じて、座卓のリフォームのご相談をいただきました。

『 現在座卓として使っている板がとても厚くて重く、大人4人がかりでないと動かすことができない。重すぎて不便なので、厚みを半分の2枚の板にして、1枚は再び座卓に、もう1枚はテーブルにしたい。』 というお話しでした。

テーブルは娘さんご夫婦の新居用で、脚は鉄で、というご希望です。

鉄の脚は私達ではできないので、ギャラリーのオーナーさんに、鉄を扱い、ギャラリーの内装などもされる現代アートの作家さんを紹介していただき、岡山のお客様のお宅へ伺いました。

お客様のお宅で待っていたのは、長さ180cm、巾90cm、厚さ約13cmの立派な ”肥松” の一枚板でした。

”肥松” は、松ヤニをたっぷりと含んだ松材で、水に沈むものもあるようですから、比重を 1g/cm^3 として、ざっと 200kg…。 重いはずです。

芯を含んだ部分で、大きな割れや傷みもあったため、デザイン等の詳細については、製材をして、板の状態を確認してから改めてお話しをすることになり、お客様方にも力をお借りして板をトラックに積み込み、淡路へ持ち帰りました。

製材前の状態(表)
製材前の状態(表)

製材前にまず、板の状態を確認しました。

無塗装のようですが、使い込まれた表側はとてもよい色つやになっていました。

時間をかけて松ヤニをためこんだ巨木の、根に近い部分のみが ”肥松” になるそうで、とても貴重な材料です。

製材前の状態(裏)
製材前の状態(裏)

表にも割れ目が見られますが、裏側で割れが長く拡がり、割れの周囲には朽ちているような傷みも見られます。

製材前の状態(割れの様子)
製材前の状態(割れの様子)

割れはかなり深く、さらに割れの周囲には、指でつつくとボロボロ崩れてしまうような傷みが広く拡がっていることが分かりました。

半分に割くことで、バラバラの4枚の板になってしまう可能性もあったため、お客様に状態をご報告したうえで、製材を行うことになりました。

製材所で吊られて運搬中
製材所で吊られて移動中

製材は近くの製材所にお願いしました。

平面出し
平面出し

大きな大きな帯鋸にセットされた板。

まず、反っている板を平らにするため、両面を薄くそぎ落としました。

2枚に切断中
2枚に切断中

そして、半分に。

まるで羊羹かチーズを切っているように、板が真っ直ぐ切れていきました。

さいわい、懸念していたようにバラバラになることはなく、無事に2枚の板にすることができました。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)

座卓については、「できるだけ元の形のままで」、というご希望があったため、比較的状態の良い方を使うことにしました。

製材された板(テーブル用)
製材された板(テーブル用)

テーブルについては、当初は私達のところで天板を仕上げ、別に作っていただいた鉄の脚と組み合わせる予定でしたが、板の状態も踏まえ、脚と天板を一緒に製作した方が、まとまりのあるよいものになるのではないかと考え、先の、鉄を扱う作家さん(鉄だけでなく、木やガラスなど、様々な素材を扱われるそうです)におまかせすることになりました。

先日、座卓の納品の際に出来上がったテーブルの写真を見せていただきましたが、木の大きなキズも活かして鉄と組み合わせた素敵なテーブルに仕上がっていました。

来週は、このあと、完成・納品までのご報告を予定しております。(Ku)

冬のおやつ

穏やかだったお正月とはうって変わり、グッと冷え込む日が続いています。

昨日の朝は、工房に着いたときの気温が-1℃で、この冬一番の冷え込みでした。

小諸に住んでいた時は、真冬は-15℃くらいまで気温が下がったので、それに比べれば春みたいなものなのですが、やっぱり寒いです。不思議なものですね。

さて、冷蔵庫から ”たたきゴボウ” や ”数の子” などのお正月料理が少しずつ消えていくとともに、仕事も通常モードに戻って、私はボチボチと確定申告の準備を始めました。

帳簿の整理でゴチャゴチャした机も冬の風物詩?
帳簿の整理でゴチャゴチャした机も冬の風物詩?

1年にいっぺんしかしない計算は忘れてしまっていたりして、なかなか思うように進みません。

そして、冬といえば、薪ストーブでの楽しいおやつ。

薪ストーブで焼いた”あん餅”
薪ストーブで焼いた”あん餅”

昨日のおやつは、お正月の残りの ”あん餅” 。

お餅が柔らかくなるまでじ~っくり焼いて、アチチチッ、ハフハフ… と賑やかにいただきました。(Ku)