『WORK CHAIRS』へ出品します

毎年この時期に、全国各地の木工家が名古屋に集い、いろいろなテーマを決めた展示会やフォーラム、勉強会などを集中して行う 『木工家ウィークNAGOYA』 というイベントが開かれており、今年で6回目になります。

昨年初めて、その一連の展示会のひとつ 「ちょっとスツール 和みタイム」 というスツールをメインにした展示会に参加させて頂いたのですが、今年は「WORK CHAIRS」という、椅子の展示会に参加させて頂く事になりました。

ひとことで ”椅子” といっても、食事用,読書用,居眠り用など、いろいろな役割に適した様々な椅子があります。この「WORK CHAIRS」~はたらく木の椅子展~は、作り手が「○○をするための椅子」というテーマを持って製作した椅子の展示会です。

北海道から九州まで、全国の27名の木工家が製作した50脚の”はたらく木の椅子”が展示されます。

私達は、「座って体操をするための椅子」,「玄関で身支度をするための椅子」,「台所でお鍋の番をするための椅子」の3点を出品します。

会場は、名古屋市にある約90年前に立てられた洋館を整備した施設 「文化のみち橦木館」 です。お近くにお出掛けの機会がございましたら、是非お立ち寄りください。(Ku)

『WORK CHAIRS』のご案内
『WORK CHAIRS』のご案内

懐かしい出会い

気のせいか、今年はツバメの数が多いように感じます。

厚い雨雲に覆われた空の下、互いに鳴き声を交わしながら、勢いよくとび回っている姿をよく目にします。

田植えの終わった田んぼでは、灰色サギが水面に目をこらしながら、まさに“抜き足差し足”といった風情でゆったりと歩いています。

工房の脇の庭では今年も桔梗の花が開きました。

桔梗のつぼみは紙風船のようです
桔梗のつぼみは紙風船のようです

ある朝のこと、作業前に庭の様子を見回っていると、今にも開きそうなつぼみを見付けました。紙風船のような“まあるい”つぼみは今にもはじけそうで、中の様子を想像すると、なんだか年甲斐もなくワクワクします。

いつもは開ききってしまったあとに気が付き、開く様子を注意深く見たことがなかったので、そっと手で開いてみたい衝動を抑えつつ、今回はマメに観察してみることにしました(もちろん、作業の合間に…)。

中央から放射状に切れ目がひろがり…
中央から放射状に切れ目がひろがり…

昼前になると、つぼみの先端から放射状にひかれた五本の線に割れ目が入っており、中の様子をのぞき見ることが出来ました。

つぼみの中央に位置する“雌しべ”は何かのモニュメントのようで、厳かな感じがします。その一方で、花びらで柔らかく包み込まれたその外観からは、甘い上品なパイ生地の洋菓子を連想してしまいます。

生まれたての“青”
生まれたての“青”

お弁当を食べて、少しゆっくりしてから再び覗いてみると、花は既に開ききってしまった後でした。何の拍子にどのように開くのか、その瞬間は今回も観ることは出来ませんでしたが、初めて外気に触れた桔梗の“青”は、“みずみずしい”の一言に尽きます。

毎年決まった時期に芽を出し、そして花を咲かせるその健気な姿を眺めていると、小さな花一つにも自然の営みの偉大さを感じずにはいられません。めまぐるしく変化する私達の日々の暮らしの中で、時にはそんなものに目を向ける心のゆとりも大切にしたいものです。

先日の地元での初めての展示会では、いくつかの懐かしい出会いがありました。

高校まで一緒だった同級生。私達が子供だった頃は、年頃の特有の恥ずかしさもあり、異性と言葉を交わすことはあまり無かったように思います。なので、あんなにゆっくりと話しをしたのはもしかしたら初めてかもしれません。友達の近況や、すっかり変わってしまった故郷のことを、懐かしい言葉で話しました。

東京で活躍しているという同級生のお母さん。高校の時水泳部だった彼とは、大学2年の夏休み、帰省していた時に地元のプールへ一緒に通いました。

そして、中学1年生のときから高校1年生までの4年間、兄と2人で家庭教師をして頂いた方とも約27年ぶりに再会しました。

当時の私は、今思い返してもお世辞にも勉強が出来るとはいえず、飽きっぽい性格とめんどくさがり屋の性格が合わさって、何に対しても中途半端で短絡的な子供でした。

2歳年上の兄が勉強を見て頂いていたので、ついでに私も、ということになり、週2日、英語と数学を見て頂くことになりました。教科書を中心に、丁寧に教えて頂いた甲斐があり、その頃から、少しずつ“解る楽しさ”に触れることができるようになったと思います。そして、いろいろなところへ寄り道をしながら、今日に至るわけです。大げさに、なおかつ、かなり大胆に省略して言えば、勉強をして、大学へ行って、家内と出会い、今日のような生活をする土台を築いていただいた、といっても過言ではないかもしれません。

ナラの玄関椅子
ナラの玄関椅子

その方が、今回、玄関椅子をご注文下さいました。

ご自身で経営しておられるグループホームの玄関で使用されるとのこと。今までお使いになっていたものは、小さなアームがついたタイプのもので、当初はつかまったりするのに便利ではないかと考えておられたのですが、実際にお年寄りがお使いになると、何かのはずみでそのアームの部分に腰掛けることになったりして、かえって危険なことが多く、困っておられたとのこと。

今回の展示会でご覧頂いた玄関椅子の、座板の長さと奥行きを大きくし、オイル仕上げでお作りすることになりました。座板を長くしたことで、お年寄りのご夫婦に仲良く隣り合ってお座り頂くことも出来るようになりました。

樹種は、ナラで、木目が詰まった素直な材です。長く使い込んでいくことで、ツヤも上がり、きっと味わい深いものになると思います。ありがとうございました。

今回、いくつかの懐かしい出会いに恵まれ、改めて気がついたことがあります。

それは、私達は、今を“点”で生きているのではなく、過去から現在、そして未来へと続く“線”の上を生きているということです。今を生きる世界中の人達の70億の線の交わりが“出会い”ということになるのでしょうか…(Hi)

本福寺にて

丸スツール
丸スツール

今週は、近くにある本福寺に、新しくできた『丸スツール』の写真を撮影しに行ってきました。

以前から何度か見学に伺い、斬新で神秘的な雰囲気がとても気に入っていたので、思いきって本福寺のご住職に撮影したい旨お願いしたところ、快く了解してくださいました。

本福寺には、安藤忠雄氏の設計による「水御堂」というコンクリート造りの本堂があります。蓮の池の下に本堂があるというとても不思議な造りになっています。

お寺に着くと、ちょうど朝日が射し込み始めていて、敷き詰められた玉石やコンクリートで造られた長大な曲面の壁(俗界と聖界の境界を表しているそうです)がとても神秘的な空間を作り上げていました。

写真左側の茶色の方は、拭漆仕上げ、右側はオイル仕上げです。寸法等の詳細や、アップ写真は、後日改めてホームページの「作品」ページでご紹介させていただきます。

水御堂のスイレン
水御堂のスイレン

本堂屋根の蓮池には、スイレンの花が咲いていました。(Hi)

玄関椅子

これから、新しく作ったいろいろな作品や製作過程を、このブログの中でご紹介していきたいと思っております。

手はじめに、ホームページの、『最近の製作から』の中でご紹介した2点の作品をこちらに移動させていただきます。

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今回は6月30日にホームページに掲載した玄関椅子です。

玄関椅子
玄関椅子

新築のお祝いに、座って靴の脱ぎ着などの簡単な身支度をするための、玄関に置ける椅子を贈りたいとのご要望で製作しました。

座版と脚は栗、肘掛けは桂を使用し、オイルを塗って仕上げました。

使い込むにつれて深まっていくツヤを愉しんでいただけたらと思います。(Ku)