今週金曜日からは、淡路での展示会です。

今週金曜日(26日)からは、地元、東浦サンシャインホール2階ギャラリーでの展示会が始まります。

おかげさまで今回で6回目を迎えます。

 

展示会では毎回、注文製作のご相談も大歓迎なのですが、昨年は「リユース」での製作のご相談を2件いただきました。

1件は、建て直しのために取り壊した古い家のケヤキの「床板(とこいた)」を使って飾り棚を作りたいとのご相談でした。

「置き床の間」として使えるような違い棚風の飾り棚で、上には台に吊した明珍の風鈴を飾る予定であること。また、拭漆仕上げとし、大人が一人で抱えて持ち運びできるサイズにしたい、などのご希望をうかがい、図面作成のうえ打合せを行い、製作させていただきました。

”床板”を再利用した「違い棚」
”床板”を再利用した「違い棚」

もう1件は、古い模様ガラスの入った引き戸を再利用したいとのご相談でした。

取り壊したご実家に、壁一面の大きな造り付けの収納棚があり、その引き戸のガラスがあまりに綺麗なので、引き戸だけ取り外して持ち帰って来られたとのこと。

ご自宅に伺い、引き戸を見せていただいたのですが、ほんとうに綺麗なガラスで、引き戸自体も不具合なくたいへんしっかりしており、そのまま使用しても問題がなさそうでした。

窓の下、壁際に置く収納棚をご希望とのことで、引き戸をそのまま使った、引き出し付きの戸棚を製作することになりました。

古い引き戸を再利用した「収納戸棚」
古い引き戸を再利用した「収納戸棚」

引き戸の塗装(ラッカー塗装と思われます)はそのままで、躯体はタモのオイル仕上げです。

引き戸の暗めの濃い色と躯体の明るい色のコントラストがきれいな戸棚に仕上がりました。

使用した古い”引き戸”のガラスの模様
使用した古い”引き戸”のガラスの模様

この引き戸は、昭和初期もしくはもう少し古い時代のもののようで、細かく複雑な模様が全体に入ったガラスがとても綺麗でした。

こんなに味わい深い模様ガラスは、もうほとんど手に入らないのではないでしょうか…。たいへん貴重な仕事をさせていただいたと感謝しています。

 

これまでにも、古い箪笥の寸法直しや、テーブル天板の交換、家や家具から外した材木の再利用など、リメイク,リユースでの製作をさせていただいております。

昔の家や家具は、良質な材料で丈夫に丁寧につくられていてリメイク,リユースに適したものが多いので、今の生活では使いにくいとか、大き過ぎるなどということだけで処分してしまわずに、少し手を加えることを検討されることをおすすめします。

愛着や思い出のある家具や材木を、こらからまたさらに使い続けることができる家具などに生まれ変わらせるお手伝いも喜んでお引き受けいたしますので、お気軽にご相談ください。

 

さて、最後の追い込み製作や諸々の準備に追われる私たちを尻目に、工房の庭の季節はどんどん進んでいるようです。

以前、岡山玉野の展示会で飾って頂いた芍薬(牡丹かも…)の花がとっても綺麗だったので、工房の庭に芍薬を植えたところ、2つの蕾がつきました。

芍薬のつぼみ(5月17日)
芍薬のつぼみ(5月17日)

この水曜日の朝にやっと1つの蕾がほころびはじめ、

開いた芍薬の花(5月18日朝)
開いた芍薬の花(5月18日朝)

翌日木曜日の朝に花を開きました。

芍薬は夕方になると花は閉じ、また翌朝になると開くのですね。

それでは、サンシャインホールでは今年も充実した空間を楽しんで頂けるよう、新作も準備してお待ちしておりますので、是非、脚をお運びください。(Ku)

 

座卓の製作 -その2-

先週に引き続き、座卓製作のご報告です。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)表側

座卓用の材木の状態をさらに詳しく確認し、キズの少ない面を表側にすることにしました。

座卓用の材木の裏側
座卓用の材木の裏側

裏面には割れが長く伸び、部分的に表裏を貫通していました。また、割れの周辺には深い部分まで傷みが拡がっていました。

割れの周辺に拡がった傷み
割れの周辺に拡がった傷み

黒っぽく変色している部分は、朽ちたように脆くなっており、指で触ると簡単に崩れてしまう状態です。

このままでは今後長くご使用頂くうちに、ボロボロと崩れ落ちてしまうなどの支障が出てしまうので、痛んだ部分は削り落とす必要があります。

虫食いの穴
虫食いの穴

割れやキズの他、虫食いの跡の穴も多数みられました。

お客様に、板の状態をご報告するとともにいくつかのご希望をうかがい、次のように製作を進めることになりました。

・脚はこれまで板を載せていた角材を、脚として再び使用したい。
→ 座卓の天板部分を製作し、それを角材の上に載せる。
・天板の大きさ、形はできるだけ元のままで使用したい。
→ 寸法は変えず、シルエットを柔らかくするために側面にのみ緩いアールを付ける。
・使い勝手が良いように、表側はキズ等を埋めて平らにして欲しい。
→ 割れや傷みを漆等で埋めて平滑に仕上げる。
・裏側はキズは残って構わない。
→ キズや傷みが拡がったり崩れたりないように処理し、自然に仕上げる。
・高さはこれまでと同じに。
→ 板の裏側に、板の反りを防ぐとともに補強の役割りもある ”反り止め” を取り付け、それと井形に組んだ ”幕板” の高さで座卓の高さを調整する。
・仕上げは拭き漆仕上げで。
(仕上げについては、キズを漆で埋めることに加え、12,3年前に、肥松に漆を塗って作った小刀のサヤが、現在とてもよい色つやになっていることもあって拭き漆仕上げをおすすめしました。)

最大の問題は、板の中心を貫く大きな割れの処理でした。

持ち上げると割れに向かって板がたわみ、板を動かす度に、2つに割れてしまうのではないかとドキドキしました。

単に割れを埋めるだけでなく、埋めることによって板に強度もでるような処理が必要でした。また、貫通してしまっている箇所をどうやって埋めるか、などなど…。

出来上がった座卓の表面
仕上がった座卓の表面

2人で知恵をしぼり、試行錯誤の末にキズを埋め、ご希望に沿うような状態にすることができました。

出来上がった座卓の裏側
出来上がった座卓の裏側

裏側に取り付けた ”反り止め” と ”幕板” は、栗材です。

長手方向の ”幕板” が脚の角材に直接載ることになります。

納品した座卓
納品した座卓

板の下に見えているのが、脚の角材です。

工房ではかなり存在感のある座卓でしたが、納品した瞬間から、落ち着いた雰囲気でお部屋にしっかりと馴染みました。さすが、元々あった場所ですね。

大人2人で移動できる重さになったことに加え、仕上がりの状態もとても喜んでいただきました。ありがとうございました。

さて、この猛暑の中、木曜日から我が家の冷蔵庫の冷蔵室がほとんど冷えなくなってしまいました。

冷凍庫は正常に機能しているのですが、どうも冷蔵室に冷気が回っていないようです。取り急ぎ、保冷の必要なものだけクーラーボックスに避難させてしのいでいましたが、何もかもが生ぬるく、暑さをひときわ厳しく感じました。

今日、メーカーの人に応急修理をしていただき、なんとか復旧しました(水曜日に部品交換の予定です)。

たった2,3日の不便でしたが、冷蔵庫のありがたさを改めて感じました。(Ku)

座卓の製作 -その1-

今週と来週の2回に分けて、先日納品した座卓についてのお話しをさせていただきたいと思います。

半年ほど前、お世話になっている岡山のギャラリーのオーナーさんを通じて、座卓のリフォームのご相談をいただきました。

『 現在座卓として使っている板がとても厚くて重く、大人4人がかりでないと動かすことができない。重すぎて不便なので、厚みを半分の2枚の板にして、1枚は再び座卓に、もう1枚はテーブルにしたい。』 というお話しでした。

テーブルは娘さんご夫婦の新居用で、脚は鉄で、というご希望です。

鉄の脚は私達ではできないので、ギャラリーのオーナーさんに、鉄を扱い、ギャラリーの内装などもされる現代アートの作家さんを紹介していただき、岡山のお客様のお宅へ伺いました。

お客様のお宅で待っていたのは、長さ180cm、巾90cm、厚さ約13cmの立派な ”肥松” の一枚板でした。

”肥松” は、松ヤニをたっぷりと含んだ松材で、水に沈むものもあるようですから、比重を 1g/cm^3 として、ざっと 200kg…。 重いはずです。

芯を含んだ部分で、大きな割れや傷みもあったため、デザイン等の詳細については、製材をして、板の状態を確認してから改めてお話しをすることになり、お客様方にも力をお借りして板をトラックに積み込み、淡路へ持ち帰りました。

製材前の状態(表)
製材前の状態(表)

製材前にまず、板の状態を確認しました。

無塗装のようですが、使い込まれた表側はとてもよい色つやになっていました。

時間をかけて松ヤニをためこんだ巨木の、根に近い部分のみが ”肥松” になるそうで、とても貴重な材料です。

製材前の状態(裏)
製材前の状態(裏)

表にも割れ目が見られますが、裏側で割れが長く拡がり、割れの周囲には朽ちているような傷みも見られます。

製材前の状態(割れの様子)
製材前の状態(割れの様子)

割れはかなり深く、さらに割れの周囲には、指でつつくとボロボロ崩れてしまうような傷みが広く拡がっていることが分かりました。

半分に割くことで、バラバラの4枚の板になってしまう可能性もあったため、お客様に状態をご報告したうえで、製材を行うことになりました。

製材所で吊られて運搬中
製材所で吊られて移動中

製材は近くの製材所にお願いしました。

平面出し
平面出し

大きな大きな帯鋸にセットされた板。

まず、反っている板を平らにするため、両面を薄くそぎ落としました。

2枚に切断中
2枚に切断中

そして、半分に。

まるで羊羹かチーズを切っているように、板が真っ直ぐ切れていきました。

さいわい、懸念していたようにバラバラになることはなく、無事に2枚の板にすることができました。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)

座卓については、「できるだけ元の形のままで」、というご希望があったため、比較的状態の良い方を使うことにしました。

製材された板(テーブル用)
製材された板(テーブル用)

テーブルについては、当初は私達のところで天板を仕上げ、別に作っていただいた鉄の脚と組み合わせる予定でしたが、板の状態も踏まえ、脚と天板を一緒に製作した方が、まとまりのあるよいものになるのではないかと考え、先の、鉄を扱う作家さん(鉄だけでなく、木やガラスなど、様々な素材を扱われるそうです)におまかせすることになりました。

先日、座卓の納品の際に出来上がったテーブルの写真を見せていただきましたが、木の大きなキズも活かして鉄と組み合わせた素敵なテーブルに仕上がっていました。

来週は、このあと、完成・納品までのご報告を予定しております。(Ku)

和箪笥のリフォーム

9月末のたんばクラフトから10月末の倉敷での個展まで、” 準備 → 搬入 → 在廊 → 搬出” の繰り返しに追われた約1ヶ月の秋の展示会シーズンが終わり、ちょっと一息つきました。現在、展示会のためにお待ち頂いていた収納棚の製作に取りかかったところです。

今回は、展示会のご案内やご報告などで遅くなってしまいましたが、9月にお納めした和箪笥のリフォームのご報告をさせていただきます。

春のサンシャインホール(淡路市)での展示会をご覧いただいたはしもと住宅工房さま(淡路市志筑)から、和箪笥のリフォームのご相談を頂きました。

80年ほど前のものと思われる古い和箪笥をお持ちとのこと。現在は使用していないが、まだまだしっかりしていて使えそうなので、少し形を変えて、今年6月に完成したモデルハウスを兼ねた事務所でご使用になりたいというお話しでした。

リフォーム前の和箪笥
リフォーム前の和箪笥

早速現物を見せて頂くと、上中下と3分割できるタイプで、前面は縞黒檀張りの立派な和箪笥です。造りがしっかりしているうえにていねいに使われてきたようで、確かにまだまだ使えそうです。

リフォームのご希望は次のような内容でした。

上置き・・・玄関の飾り台として使いたい。ただし、現状のままだと奥行きがあり過ぎるので、奥行きを詰め、裏板を新たに作り直す。また玄関にふさわしいきれいな天板(杉板を着色塗装)をのせ、台輪も付ける。

下置き(2段分)・・・2階の部屋で収納に使いたい。奥行きはそのままでよいが、窓の前に置くので窓にかからないよう台輪の高さを調整する。また、天板(杉板を着色塗装)をのせる。

そのほか天板の色具合などの細かい点をご相談したうえで実際の作業に取りかかりました。

上置き、着手前-1
上置き、着手前-1

まずは、薄めた中性洗剤等を使ってクリーニングです。ほこりや汚れを取り除くだけでもかなりすっきりした感じになります。

写真には写っていませんが、上の引き戸を開けると棚と小さな引出しがあります。それも含めて後ろ側を切断し、奥行きを短くします。

下の引出しを引くと、” ファァ~ ” と優しいハーモニカの音がします。本来は引出しが開けられたことを知らせる防犯目的のようですが、” 防犯 ” とは思えないのんびりした優しい音色に笑顔が誘われます。残念ながら、今回は奥行きを詰めることで仕込んであったハーモニカが取り除かれてしまうので、リフォーム後はこの音色は出なくなってしまいます。

上置き、着手前-2
上置き、着手前-2

元が大きな箪笥で通常は上部が見えないので、天板は縁をまわしてあるだけです。この縁の内側にきれいな天板をのせることになります。

上置き、背面
上置き、背面

上置きの後ろ部分を切断して引出しを調整後、着色前の天板をのせたところです。奥行きを詰めたので、引出しも短くなります。これに裏板を付けて塗装をして仕上げます。

完成した上置き-1
リフォーム後の上置き-1

完成後の飾り台です。天板はご希望の色具合と他の部材とのバランスから杉板に漆を塗りました。棹通しの金具は側板の中央になるよう位置を調整しました。

完成した上置き-2
リフォーム後の上置き-2

新しい建物に古い家具はとてもよく合い、落ち着いた雰囲気を醸しだします。

リフォーム後の下置き部分
リフォーム後の下置き部分

こちらは下置きだった部分(2段分)です。玄関の飾り台にした上置きと同様に、漆を塗った杉の天板をのせ、窓の高さに合うよう台輪を切断して高さを調整しました。台輪の切断した残りの部分は玄関の飾り台の台輪に活用しました。

昔の木の家具はしっかりとした材料を使ってていねいに作られているので、修理やリフォームができるものがほとんどです。今回のように箪笥を分けて使ったり、本来の用途と違う利用の仕方を工夫するのも楽しいと思います。

私達の家具もいつかそんな風に修理やリフォームをされながら長く使って頂ければと願いながら、納得のいく材料でていねいに作ることを心掛けています。そんなことからも、昔の家具を使い続けるお手伝いができればと考えています。

本当はまだ使いたいけれど、古いからとか壊れているからなどとあきらめずに、まずはお気軽にご相談ください。状態によってはお力になれない場合もあると思いますが、出来る限りの知恵をしぼってがんばってみたいと思っています。(Ku)