「積み木」のおはなし -その2-

前回に引き続き、「積み木」のおはなしをさせていただきます。

今年4月のサンコアさんでの展示会で、”ちょっといびつな積み木” をご覧になったお客様から、「昔、息子が使っていた古い積み木を、もうじき誕生する孫にプレゼントしたいので、削りなおしてきれいにならないだろうか」 というご相談をいただきました。

積み木を見せていただくと、キズや黒ずみはあったものの、元の木がしっかりしていたので、表面を削り直せば十分きれいになりそうでした。

積み木の修理
積み木の修理

お預かりし、表面をカンナでひと削りした上でサンドペーパーで磨き、オイルを塗装し直すと、きれいな積み木に蘇りました。

木箱にきれいに収まる積み木セットだったのですが、不足していたピースが2,3個あったので、それらは新たに作り足しました。

木箱も削りなおして積み木を収めると、立派な積み木セットにリニューアルできました。

きれいに蘇った積み木セット
きれいに蘇った積み木セット

深いキズや落書きもありましたが、それはそれで歴史を感じさせてくれる味わいとして残すことにしました。

世代を越えた、素敵な贈り物のお手伝いができたことをとても嬉しく思いました。

さて、工房の庭のユズの木で見付けた ” クロアゲハ” の幼虫が、先日羽化し、旅立っていきました。

キアゲハの羽化は以前観察したことがあるのですが、クロアゲハは初めてです。

是非、羽化の瞬間を見たかったのですが、サナギになってちょうど2週間目の朝、ちょっと目を離したスキにサナギから出てしまっていました。

サナギから出た直後のクロアゲハ
サナギから出た直後のクロアゲハ

サナギの色が変わり、今日明日中には羽化しそうだったので、できるだけ目に付く場所に置いて ”その時” を待ち構えていたのですが、ほんの数分間家の外で作業をして戻ってみると、羽化したばかりでまだ羽がヨレヨレの蝶がケースの蓋にしがみついていたのです。

羽化直後のクロアゲハ-2
羽化直後のクロアゲハ-2

先の写真から約8分後の写真です。

みるみるうちに羽がしっかり開いて、あっという間に一人前の蝶の姿になりました。

きれいな曲線を描く触角、うまく巻き上げられた口、それはそれは深い色合いの青みがかった眼など、そのひとつひとつの美しさが驚きです。

羽化から約30分後
羽化から約30分後

羽化から約30分後、羽を大きく拡げたり閉じたりしはじめました。飛び立つ準備なのでしょう。

開いた羽の、細かい点で描いたような紋様にもまた魅せられました。

機能と美しさを兼ね備えた姿を創り出す、自然の力の偉大さに感服するばかりです。

この日はあいにく風が強く、飛び立つのがちょっと難しそうでしたが、羽化から2時間ほどしてなんとか無事に飛び立って行きました。

その後、さらにお隣の家の網戸にとまってしばらく羽を休ませたのち、どこかへふいに飛び立って行ったそうです。

羽化直後の一番きれいな姿を、間近でじっくりと観察させてもらいました。

ありがとう!!(Ku)

「積み木」のおはなし -その1-

私たちの定番のコモノに、「ちょっといびつな積み木」 というものがあります。

”いびつ” の文字通り、直方体などのきちんとした形ではなく、面が斜めになっていたりして、ちょっと工夫しないとうまく積むことができない、少し歪んだ形の “積み木” です。

3年ほど前、展示会へお越しくださったお客様から、「初孫のお祝いに、子供の創造力が育つような “木のおもちゃ” を何か。」 というご相談をいただきました。

どのようなものが良いのか、おもちゃ屋さんへ行ってみたりしたのですが、それはそれは様々な玩具があり、なかなかアイデアをまとめることができませんでした。

そこで保育のお仕事をしている方に相談にのって頂いたところ、「やっぱり “積み木” にかなうものはない。」 とのアドバイスを頂きました。

実際に保育施設で子供達が遊んでいる積み木を見せて頂いたところ、木の枝や小径の幹を切ったままのような変形のものがたくさん混ざっていることに驚きました。「子供達は、むしろこのような変わった形の積み木の方が楽しいようで、子供の遊びの創造力は大人の想像を越えている。」 という説明をして下さいました。

これが、「ちょっといびつな積み木」 を作り始めたきっかけです。

「ちょっといびつな積み木」入りの”積み木”
「ちょっといびつな積み木」入りの”積み木”

もちろん、”いびつな積み木” だけではうまく積み上げることができず、積み木遊びにはなりませんから、お孫さんへのお祝いとしては、”いびつな積み木” と、きちんとした形のものを混ぜた「積み木セット」をご提案し、これを納める木の箱をあわせてお作りすることになりました。

家具製作で出る端材を活用することで、木の種類も様々になり、色にもバリエーションが出ました。

手触りをよくするとともに、木の質感が出るよう、積み木の表面には滑らかな刃物の削り跡を残して仕上げました。

塗装には、食器にも使用されている自然素材のオイルを使用していますので、赤ちゃんが舐めても囓っても安心です。

木の箱に収めた積み木セット
木の箱に収めた積み木セット

積み木を納める箱は、見た目も手触りも柔らかな ”桂” を使用しました。底には車輪を付け、転がして運べるようになっています。

展示会では、”いびつな積み木” を展示販売させて頂いておりますが、これを通常のきちんとした形の積み木にいくつか混ぜて頂くと、”積み木の世界” が一気に広がるのではないかと考えています。(Ku)

白い小鳩が…

今週、我が家に白い小鳩が赤いきれいな贈り物を届けてくれました。

白い小鳩が赤いきれいな贈り物を届けてくれました
白い小鳩のお届けもの-その1-

送り主はいつもお世話になっているギャラリーのオーナーの方です。

いつも頂いたことがないような遊び心あふれる演出に少しときめきながら、そっと開けてみると、中からは小さなハート型のチョコレートが添えられた心のこもった手作りのグリーティングカードがでてきました。

小鳩のお届けもの-その2-
白い小鳩のお届けもの-その2-
中からはカードとハート型のチョコレートが…
中からはカードとハート型のチョコレートが…

心のこもった“小さな”贈り物に、季節を先取りするように気持ちがパッと明るくなり、心がほんのり温かくなりました。

新作のトレイです
新作のトレイです

いま、工房では春からの展示会シーズンに備えて新作の小物製作に追われています。小物といえども使い勝手はもちろんのこと、木目の流れや木の質感を気にしながら一つ一つ丁寧に作っていくので手間のかかることなのですが、使って頂く方に喜んで頂けるよう、また、木に対しても失礼の無いように気をつけながら、作業に励んでいます。

皆さんに見て頂ける日がとても待ち遠しいです。どうか、お楽しみに。(Hi)

とうとう…

金曜日、工房で流しているラジオからただならぬニュースが耳に飛び込んできました。

「ニホンウナギ、絶滅危惧種に指定される!!」

私の生まれ故郷は、ウナギの産地、静岡県の遠州地方です。「うなぎ屋」 が別段珍しくない環境で、袋に詰まった 『うなぎパイ』 の割れせんをおやつに育った私にとって、ウナギは大好物でもあり、ふるさとの味なのです。

当地で主流の、蒸してから焼いたふっくらした蒲焼きも、蒸さずに焼いたしっかりした食感の関西風の蒲焼きも、わさび醤油でいただく白焼きも大好きです。

それでも近年の価格高騰のせいで、ここ数年は1年に1度口にするかどうかという状態が続いていました。

お恥ずかしいことながら、野生の稚魚を捕獲して育てたものが 「養殖うなぎ」 であることはごく最近になるまで知りませんでした。「養殖」 という言葉から、卵から育てるいわゆる 「完全養殖」 と勝手に思い込んでいたので、私達がおいしい、おいしいと言って食べ続けることで、こんな風に絶滅の危機に陥るなんて夢にも思っていませんでした。

いくら大好物といっても、1つの種を絶滅させてまで食べようとは思いません。

実は昨年、『夏が来た!展』 用に製作した 「かつらのなべしき 夏バージョン」 の中に、私のウナギへの思いを秘めたものが2点ありました。

「うなぎ ~また会う日まで~」
「うなぎ ~また会う日まで~」

なべしきにはそれぞれ副題が付いているのですが、これは「うなぎ ~また会う日まで~」。

ウナギが完全養殖され、私達の食欲による絶滅の危機を脱する日までウナギを食べるのは我慢しようという私の決意を表した作品です。

「風鈴 ~う○○~」
「風鈴 ~う○○~」

”○” の中には、” な ” と ” ぎ ” が入ります。「うなじ」でも「うかい」でもありません。

今回ニホンウナギが指定された「絶滅危惧ⅠB類」を調べてみると、よく知っている動物では、イヌワシ,オジロワシ,ライチョウ,ヤンバルクイナ,アマミノクロウサギなどがありました。絶滅の危機にあるイヌワシやヤンバルクイナを食べようなどとは思いません。ウナギがこれらの動物と同類であることを心に留め、私のウナギへの決意を守っていきたいと思います。

きっと私は平均的な日本人より、ウナギをたくさん食べてきたと思います。その反省も込めて…。

さて、この日曜日の夜から月曜日の朝にかけて、淡路では珍しく雪が積もりました。ひどい雷も鳴っていたのですが、朝、車に積もっている雪を見てびっくり!!

あられ、ひょう混じりの雪
あられ、ひょう混じりの雪

直径が1cm以上もある ” ひょう ” や、” あられ” がたくさん混じった雪だったのです。

スノードロップの花が咲きました
スノードロップの花が咲きました

でもやっぱり春はやってきます。

今年も春を知らせる ”スノードロップ” が花を咲かせました。左の奥に頭を出しているのもスノードロップです。この1本だけちょっと早めみたいです。(Ku)

”のじまスコーラ”に行ってきました

いつもお世話になっている姫路のギャラリーのオーナーさんが淡路にいらっしゃいました。ランチをどうしようかと迷った末、先月オープンした ”のじまスコーラ” に行ってみました。

のじまスコーラ
のじまスコーラ

ここは、昨年廃校になった”野島小学校”の校舎や敷地を活用した施設です。

周囲におしゃれなデッキやパラソル、軒が付けられていますが、窓の雰囲気や時計台など、学校の名残はそのままです。

のじまスコーラ駐車場
のじまスコーラ駐車場

運動場がそのまま広々とした駐車場となっており、片隅には遊具やプールがそのまま残されています。

採れたて野菜や焼きたてのパンを販売するマルシェ、ランチやティータイムを楽しめるカフェ、コース料理などのディナーをいただけるリストランテ、ミニコンサートなどが開かれるミュージックホールなどが、教室だった部屋を利用してつくられています。

カフェでのランチメニューは、メインとしてパスタ、カレー、ピッツァから1品選び、これに食べ放題の野菜バー(フォカッチャ付き)が付いています。今回はちょっと贅沢にコーヒーとデザートもセットに。

パスタとピッツァ
パスタとピッツァ

3人でそれぞれ違うものを注文し、少しずつ分け合って頂きました。

2種類のパスタ、”淡路玉葱とベーコンのトマトソース”と、上の写真の魚介類のたくさん入ったもの(メニューの名前は忘れました)と、淡路たまねぎのたくさんのった白いピッツァ(これも名前は忘れました)。

淡路たまねぎの甘みや魚介類の旨み、トマトのやさしい酸味など、どれも薄味で素材の味がよく分かり、とてもおいしかったです。

生野菜や、ボイルやソテーしただけのシンプルな野菜に好きなドレッシングをかけて好きなだけいただける”野菜バー”もよかったです。ただ、お腹がすいていたので、メインが出てくるまでひたすらこれを食べてしまい、全て食べ終わる頃には少々食べ過ぎの状態に…。

デザートは大きなティラミスでした(すみません、写真を撮る前に平らげてしまいました)。

工房から15分ほどで行くことができるので、またお客様がいらっしゃったときなどに行ってみようと思います。

器のふた-1
器のふた-1

先日、お茶をされるお客様から、切り子ガラスのコップを“なつめ”に見立てて使うための ”蓋” をご注文頂きました。

ご要望をお聞きしながら何種類か試作をさせていただいたうえで、2種類をお作りし、このたび納品させていただきました。

器のふた-2
器のふた-2

細かい木目がきれいに現れる ”せん” を使用し、涼しげな器に合うようにオイル仕上げとしました。

蓋を付けることでコップが立派な“なつめ”になるとのこと。”見立て”の楽しさを教えていただきました。(Ku)

カトラリーのおはなし

毎年この時期に名古屋に全国から木工家が集まり、様々な企画や展示が行われる『木工家ウィークNAGOYA』というイベントが開催されます。今年は初めて、その企画のひとつである「ちょっとスツール和みタイム vol.2」に参加させていただくことになりました。

いろいろな木工家の製作したスツールのほか、木のカトラリーや器を東急ハンズ名古屋店で展示販売する企画で、私達は”太田秀世家具工房”として、スツールとカトラリーを出品する予定です。

カトラリーは、端材を利用して私が製作しているのですが、手で一本一本削りだしていく作業は、コモノとはいえなかなか手間がかかり、在庫にあまり余裕がありません。今回の出品にあたって補充製作中ということもあり、代表的なものを紹介させていただきます。

ティスプーンとミニフォーク
ティスプーンとミニフォーク

オーソドックスな形のティースプーンとミニフォークです(長さ約12cm)。写真は蜜蝋を塗って仕上げたものですが、拭き漆で仕上げたものもあります。

スプーンをお買い上げ下さったあるお客様は、”半熟卵を食べるとき、金属のスプーンではどうしても金属味が気になる。これは半熟卵専用にしたい。”とのことでした。

バターナイフ
バターナイフ

バターナイフ(長さ約17cm)は少し変わった形をしています。もっとナイフに近い形のものが一般的だと思いますが、これにはちょっとしたエピソードが…。

以前はナイフ状のものを作っていたのですが、それをご使用下さっていたあるお客様から”折れてしまった”とのお話しが。

状況をお聞きしたところ、ビン入り発酵バターを愛用されており、普段は冷蔵庫から出して少し柔らかくなってからバターナイフを使われていたそうなのですが、その時はちょっと急いでいて、まだ固い状態のバターを無理にすくい出そうとされたのだそうです。バターナイフ自体に問題があったわけではなさそうでホッとしましたが、私の想像の中に”ビン入りバター”というものが全く無かったことに気づかされました。

そこで、ビン入りバターにも使いやすいよう、持ち手を大きくして握りやすくし、力を入れても折れにくいよう、硬く木目のつまったナラの木を使い、くびれの部分もある程度の太さを持たせた形にしてみました。前述のお客様にもご試用いただいたところ気に入って頂けたので、これを私の定番のバターナイフとしました。

一般的なバターケースには収容できないという難点はありますが、本来の目的である”バターが塗りやすいこと”を優先させたバターナイフです。

ジャムスプーン
ジャムスプーン

ジャムスプーン(長さ約17cm)は、あまり力がかからないので、すっきりスマートな形です。ビンの底までしっかりすくい取れるよう、先の形を工夫しました。

ミニスプーン
ミニスプーン

この、革ひもを巻いたちょっとおしゃれな雰囲気の短いスプーン(長さ約9cm)は、実は失敗の産物です。

以前、スマートな細身の食事用のスプーンを製作してみたことがあります。試用してみるととても食べにくく、食事用には使いたくない代物になってしまいました。でも形はとても気に入ったので、シュガースプーンとして使えないかな、と何本か作っていたところ、そのうちの1本が、元々割れが入っていたらしく、首のところで折れてしまいました。

せっかく手間をかけて削ったので薪にしてしまうのはもったいなく、家で何かに使えないかと考えましたが、なにせ柄がほとんど残っていません。そのままではとても持ちにくかったので、残った短い柄の部分に紐を巻いてみたところ、なんだかいい雰囲気に。家でコーヒー豆用に使ってみると、これがまた良い感じ。

で、残りの製作中のものも柄を短く切って、持ち手に革ひもを巻いて、コーヒー豆、茶葉、調味料などにお使い頂ける小さなスプーンにしました。

あるお客様は、「アクセサリーにも使えるね」と。それを聞いた私が”アクセサリーとして身につけておけば、デパ地下の試食にも使えるかも” なんて意地汚いことを考えたのはここだけの話。

小匙
小匙

これもちょっと小さめのスプーン”小匙”です(長さ約7cm)。写真は蜜蝋を塗って仕上げたものですが、拭き漆のものもあります。

もともとは紅茶葉を測る”ティーメジャースプーン”として作ったものです。初めはもっと持ち手が小さかったのですが、お客様の”お箸置きにもなるね”との声で持ち手を少し大きくして、お箸を置いても安定するよう改良したのが今の形です。持ち手を大きくすることで持ち心地も良くなりました。

ティーメジャースプーンとしてはもちろん、お薬味や香の物の器を兼ねたお箸置きとしてもご使用いただけます。

こんなふうに、お客様との会話など、ひとつひとつの作品にはそれぞれ忘れられない思い出があります。手づくりならではの醍醐味であり、同時に責任も感じます。大量生産ではできない、丁寧なものづくりを続けていかなければ、と思います。

ひめじクラフト・アートフェア2012
ひめじクラフト・アートフェア2012

ところで、いよいよ来週は、「第12回ひめじクラフト・アートフェア」です。今年で3回目の参加となります。今回は、定番の椅子やスツール,上で紹介したカトラリーなどのコモノのほか、小さめでシンプルな厨子など、クラフトフェア初出品の作品も展示する予定です。

121番ブースで2人でお待ちしておりますので、是非お立ち寄りください。

よいお天気になりますように!!(Ku)