シンプルな学習机

「データベースの移行」 ですったもんだしているうちに、いつのまにかウグイスの声が聞こえる季節になってしまいました。

さてさて、今週からまた、私たちの ”べっちゃない日々” のご報告をさせていただくのですが、昨年末からいくつか納品がありましたので、それを遡るかたちで、数回に分けて1つずつ紹介させていただこうと考えております。

今回はまず、今週末に納品させていただきました 「学習机」 です。

 

昨秋の倉敷での展示会で、この春に小学生になる子供さん用の学習机のご相談をいただきました。

「大きさは 60×110cm程度、引出や棚板の無いシンプルなデザインのものを、オイル仕上げで」 というご希望でした。

シンプルなだけに、「天板」と「脚」をどのような形にし、どう組み合わせるかがポイントになります。また、子供さんがお使いになるのですから、扱いやすくかつ丈夫であることも大切です。

実は、この学習机のお話しを伺う2ヶ月ほど前に、児童発達支援施設を運営されている方から、小学生用の机と椅子のご相談を頂いておりました(この机と椅子につきましては、来週末に紹介させていただく予定でおります)。

児童発達支援施設では、障がいをお持ちの子供さんが使用されるので、いろいろと細かなアドバイスを頂きながらデザインと製作を進めました。

ただ、「障がいをお持ちの子供さん用」 とはいっても、特殊な機能を持たせたものではなく、たとえばぶつかった際にケガをしないように角を丸くする、椅子に座って机に向かった際に脚が机とぶつからず、椅子も中に入りやすいなど、誰にとっても使いやすい、いわば ”ユニバーサルデザイン” の机と椅子であり、形もスッキリとしたものに仕上がったので、そのデザインを今回の学習机にも活かすことにしました。

シンプルな学習机-1
シンプルな学習机-1

どの方向からも椅子の出し入れができ、また脚が引っかからないよう、脚まわりは極力すっきりさせてあります(構造的な強度は、天板と脚の取り付け部分の、形を工夫した幕板で確保しています)。

シンプルな学習机-2
シンプルな学習机-2

材料は天板、脚などすべて ”タモ” を用いました。

しっくい壁のお部屋の一角に納まり、すてきな勉強部屋づくりのお手伝いができたことをたいへんうれしく思います。

シンプルなだけに、大人になっても作業机や2人掛けの食卓など、いろいろな用途にお使いいただけると思います。

きっと子供さんの成長とともにツヤがでて、そして少しずつキズも付いて、素敵な机に変わっていくのでしょう。

楽しみです。(Ku)

 

欅の一枚板を使った拭き漆仕上げのローテーブル

先月、今年最後の展示会を終えてから、納品や後片づけなどでなんだかバタバタとしているうちに、あっという間にもう12月も半ばを過ぎてしまいました。

年賀状の準備や(大?)掃除などでもうしばらく落ち着きそうにもありませんが、なんとか穏やかに今年を締めくくれるよう、がんばっていきたいと思います。

さて、今回は、10月の終わりに少しだけ紹介しました、欅の一枚板を使ったローテーブルの納品の報告をさせていただきます。

今年3月にこのブログで紹介させて頂いた 「コート掛」 をご注文下さったお客様から、その後、ご自宅の洋間でお使いになる 「ローテーブル」 のご相談をいただきました。

一枚板を使った重厚感のあるテーブルをご希望とのことで、作業場にストックしている材木の中から、ご希望のサイズや雰囲気に合うものを選んで頂きました。

その結果、「コート掛」と同じ丸太から製材された、ちょうど隣り合う板を使用することになりました。

また、お部屋のダークブラウン系の家具に調和するよう、仕上げは拭き漆とすることになりました。

天板は板の自然なままの形を活かした ”耳付き” とし、脚の形状は、3種類ほどのデザインをご提案させて頂いたところ、たいへんありがたいことに、どっしりとした雰囲気であれば、細部はお任せ頂けることになりました。

ローテーブルの裏側
ローテーブルの裏側

上の写真は組立完了直後の状態で、天地が逆になっていますが、脚はタモの厚盤から切り出して製作しました。

ローテーブルの天板
ローテーブルの天板

全体的に木目の詰まったきれいな板で、それに加えて、先日のブログで紹介させて頂いたように、”耳” に近い部分には、非常に複雑できれいな木目が目を惹く、たいへん美しい天板に仕上がりました。

納品したローテーブル
納品したローテーブル

無理をお願いして11月の倉敷での展示会で展示させて頂いた後、先月無事に納品いたしました。

お部屋の雰囲気や、他の調度品にぴったりで、お客様にもたいへん喜んで頂くことができました。

年月の経過と共に木目の美しさもさらに引き立ち、味わいを増していくことと思います。(Ku)

いよいよ3日から、倉敷での展示会です。

週明けの火曜日から、いよいよ倉敷での展示会です。

本日、展示会前の最後の作品の組立が無事に終了しました。

欅の一枚板を使った拭き漆仕上げのローテーブルのご注文を頂いていたのですが、お客様のご好意により、今回、納品前に展示させていただくことになりました。

欅のローテーブル-1
欅のローテーブル-1

天板の厚みは約50mm。

どっしりとした重厚感があります。

欅のローテーブルの複雑な木肌
欅のローテーブルの複雑な木肌

一部に皮の部分を残した ”耳付きの板” を使用しており、シンプルではあるけれども面白みも十分な形に仕上がりました。

欅のローテーブル-2
欅のローテーブル-2

部分的に非常に複雑な木目が現れており、拭き漆仕上げにすることで美しさが引き立ちました。

どっしりとした存在感のあるローテーブルを、是非会場でご覧になってください。

このほか、和室でも洋室でもお使いになれる腰掛けや、大小の「櫃(ひつ)」などの新作や、定番のベンチ、スツールなどの展示を予定しています。

モビールや鍋敷きなどの楽しいコモノもたくさん展示いたしますので、お気軽にお立ち寄りください。

コモノ類の梱包も終わり、明日はトラックへの積み込みです。

搬入の月曜日はお天気が少々心配ですが、こればかりはどうにもならないので、雨にも備えて出掛けたいと思います。

それでは、今年も会場にて2人でお待ちしております!!(Ku)

おかげさまで、10回目を迎えます。

いよいよ来週の火曜日から、倉敷での展示会 『太田秀世 木工展-2014-』 が始まります。

現在、最後の追い込み準備中で、ブログの更新もイレギュラーになってしまいました。

倉敷での展示会は、おかげさまで今年で10回目を迎えます。

会場は、初めての個展からお世話になっているギャラリーで、ドライで面倒見のよいオーナーさんに支えられながら、これまで続けてくることができました。

これからも、長く回を重ねていきたいと思っています。

机(DM)
机(DM)

ご案内のDMの写真は、書き物机やサイドテーブルなどとしてお使い頂ける、拭漆仕上げの小さめの机です。

コンパクトですが、曲面の柔らかなシルエットが特徴です。是非会場でご覧になってください。

会期を通じて2人で在廊しておりますので、お気軽に脚をお運びください。
(詳細は、ホームページ『展示会案内』に掲載しておりますのでご参照ください。)

倉敷の展示会のご案内
倉敷の展示会のご案内

さて、準備でバタバタしていても、季節はしっかり進んでいきます。

工房の庭では秋の花々が咲き始めました。

「大文字草」の花
「大文字草」の花

「大文字草」は、花の形が、漢字の「大」の字に似ていることからその名が付いたそうです。人の形にも見えます。

「ツワブキ」の花
「ツワブキ」の花

毎年盛大に真っ黄色い花を咲かせてくれる「ツワブキ」。

” フキ” と同じように食べられるようですが、厳密には ” フキ” ではないそうです。

1
「ホトトギス」の花

これは、「ホトトギス」 の花。

鳥の ”ホトトギス” の胸の模様に似ているためにこの名が付いたそうですが、私はどうしても、アニメの ”ドラゴンボール” に出て来た、なんとかいうエイリアン(?) を思い浮かべてしまいます…。

花を開く直前の「リンドウ」
花を開く直前の「リンドウ」

蕾がほころび始めた「リンドウ」。

きれいな花がこんな風にギュッと畳まれているのが不思議です。

ブロッコリー
ブロッコリー

おっと、これは花を開かせてはいけません。

ブロッコリーは花が咲く前に私たちのお腹に納めます。(Ku)

座卓の製作 -その2-

先週に引き続き、座卓製作のご報告です。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)表側

座卓用の材木の状態をさらに詳しく確認し、キズの少ない面を表側にすることにしました。

座卓用の材木の裏側
座卓用の材木の裏側

裏面には割れが長く伸び、部分的に表裏を貫通していました。また、割れの周辺には深い部分まで傷みが拡がっていました。

割れの周辺に拡がった傷み
割れの周辺に拡がった傷み

黒っぽく変色している部分は、朽ちたように脆くなっており、指で触ると簡単に崩れてしまう状態です。

このままでは今後長くご使用頂くうちに、ボロボロと崩れ落ちてしまうなどの支障が出てしまうので、痛んだ部分は削り落とす必要があります。

虫食いの穴
虫食いの穴

割れやキズの他、虫食いの跡の穴も多数みられました。

お客様に、板の状態をご報告するとともにいくつかのご希望をうかがい、次のように製作を進めることになりました。

・脚はこれまで板を載せていた角材を、脚として再び使用したい。
→ 座卓の天板部分を製作し、それを角材の上に載せる。
・天板の大きさ、形はできるだけ元のままで使用したい。
→ 寸法は変えず、シルエットを柔らかくするために側面にのみ緩いアールを付ける。
・使い勝手が良いように、表側はキズ等を埋めて平らにして欲しい。
→ 割れや傷みを漆等で埋めて平滑に仕上げる。
・裏側はキズは残って構わない。
→ キズや傷みが拡がったり崩れたりないように処理し、自然に仕上げる。
・高さはこれまでと同じに。
→ 板の裏側に、板の反りを防ぐとともに補強の役割りもある ”反り止め” を取り付け、それと井形に組んだ ”幕板” の高さで座卓の高さを調整する。
・仕上げは拭き漆仕上げで。
(仕上げについては、キズを漆で埋めることに加え、12,3年前に、肥松に漆を塗って作った小刀のサヤが、現在とてもよい色つやになっていることもあって拭き漆仕上げをおすすめしました。)

最大の問題は、板の中心を貫く大きな割れの処理でした。

持ち上げると割れに向かって板がたわみ、板を動かす度に、2つに割れてしまうのではないかとドキドキしました。

単に割れを埋めるだけでなく、埋めることによって板に強度もでるような処理が必要でした。また、貫通してしまっている箇所をどうやって埋めるか、などなど…。

出来上がった座卓の表面
仕上がった座卓の表面

2人で知恵をしぼり、試行錯誤の末にキズを埋め、ご希望に沿うような状態にすることができました。

出来上がった座卓の裏側
出来上がった座卓の裏側

裏側に取り付けた ”反り止め” と ”幕板” は、栗材です。

長手方向の ”幕板” が脚の角材に直接載ることになります。

納品した座卓
納品した座卓

板の下に見えているのが、脚の角材です。

工房ではかなり存在感のある座卓でしたが、納品した瞬間から、落ち着いた雰囲気でお部屋にしっかりと馴染みました。さすが、元々あった場所ですね。

大人2人で移動できる重さになったことに加え、仕上がりの状態もとても喜んでいただきました。ありがとうございました。

さて、この猛暑の中、木曜日から我が家の冷蔵庫の冷蔵室がほとんど冷えなくなってしまいました。

冷凍庫は正常に機能しているのですが、どうも冷蔵室に冷気が回っていないようです。取り急ぎ、保冷の必要なものだけクーラーボックスに避難させてしのいでいましたが、何もかもが生ぬるく、暑さをひときわ厳しく感じました。

今日、メーカーの人に応急修理をしていただき、なんとか復旧しました(水曜日に部品交換の予定です)。

たった2,3日の不便でしたが、冷蔵庫のありがたさを改めて感じました。(Ku)

座卓の製作 -その1-

今週と来週の2回に分けて、先日納品した座卓についてのお話しをさせていただきたいと思います。

半年ほど前、お世話になっている岡山のギャラリーのオーナーさんを通じて、座卓のリフォームのご相談をいただきました。

『 現在座卓として使っている板がとても厚くて重く、大人4人がかりでないと動かすことができない。重すぎて不便なので、厚みを半分の2枚の板にして、1枚は再び座卓に、もう1枚はテーブルにしたい。』 というお話しでした。

テーブルは娘さんご夫婦の新居用で、脚は鉄で、というご希望です。

鉄の脚は私達ではできないので、ギャラリーのオーナーさんに、鉄を扱い、ギャラリーの内装などもされる現代アートの作家さんを紹介していただき、岡山のお客様のお宅へ伺いました。

お客様のお宅で待っていたのは、長さ180cm、巾90cm、厚さ約13cmの立派な ”肥松” の一枚板でした。

”肥松” は、松ヤニをたっぷりと含んだ松材で、水に沈むものもあるようですから、比重を 1g/cm^3 として、ざっと 200kg…。 重いはずです。

芯を含んだ部分で、大きな割れや傷みもあったため、デザイン等の詳細については、製材をして、板の状態を確認してから改めてお話しをすることになり、お客様方にも力をお借りして板をトラックに積み込み、淡路へ持ち帰りました。

製材前の状態(表)
製材前の状態(表)

製材前にまず、板の状態を確認しました。

無塗装のようですが、使い込まれた表側はとてもよい色つやになっていました。

時間をかけて松ヤニをためこんだ巨木の、根に近い部分のみが ”肥松” になるそうで、とても貴重な材料です。

製材前の状態(裏)
製材前の状態(裏)

表にも割れ目が見られますが、裏側で割れが長く拡がり、割れの周囲には朽ちているような傷みも見られます。

製材前の状態(割れの様子)
製材前の状態(割れの様子)

割れはかなり深く、さらに割れの周囲には、指でつつくとボロボロ崩れてしまうような傷みが広く拡がっていることが分かりました。

半分に割くことで、バラバラの4枚の板になってしまう可能性もあったため、お客様に状態をご報告したうえで、製材を行うことになりました。

製材所で吊られて運搬中
製材所で吊られて移動中

製材は近くの製材所にお願いしました。

平面出し
平面出し

大きな大きな帯鋸にセットされた板。

まず、反っている板を平らにするため、両面を薄くそぎ落としました。

2枚に切断中
2枚に切断中

そして、半分に。

まるで羊羹かチーズを切っているように、板が真っ直ぐ切れていきました。

さいわい、懸念していたようにバラバラになることはなく、無事に2枚の板にすることができました。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)

座卓については、「できるだけ元の形のままで」、というご希望があったため、比較的状態の良い方を使うことにしました。

製材された板(テーブル用)
製材された板(テーブル用)

テーブルについては、当初は私達のところで天板を仕上げ、別に作っていただいた鉄の脚と組み合わせる予定でしたが、板の状態も踏まえ、脚と天板を一緒に製作した方が、まとまりのあるよいものになるのではないかと考え、先の、鉄を扱う作家さん(鉄だけでなく、木やガラスなど、様々な素材を扱われるそうです)におまかせすることになりました。

先日、座卓の納品の際に出来上がったテーブルの写真を見せていただきましたが、木の大きなキズも活かして鉄と組み合わせた素敵なテーブルに仕上がっていました。

来週は、このあと、完成・納品までのご報告を予定しております。(Ku)