座卓の製作 -その2-

先週に引き続き、座卓製作のご報告です。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)表側

座卓用の材木の状態をさらに詳しく確認し、キズの少ない面を表側にすることにしました。

座卓用の材木の裏側
座卓用の材木の裏側

裏面には割れが長く伸び、部分的に表裏を貫通していました。また、割れの周辺には深い部分まで傷みが拡がっていました。

割れの周辺に拡がった傷み
割れの周辺に拡がった傷み

黒っぽく変色している部分は、朽ちたように脆くなっており、指で触ると簡単に崩れてしまう状態です。

このままでは今後長くご使用頂くうちに、ボロボロと崩れ落ちてしまうなどの支障が出てしまうので、痛んだ部分は削り落とす必要があります。

虫食いの穴
虫食いの穴

割れやキズの他、虫食いの跡の穴も多数みられました。

お客様に、板の状態をご報告するとともにいくつかのご希望をうかがい、次のように製作を進めることになりました。

・脚はこれまで板を載せていた角材を、脚として再び使用したい。
→ 座卓の天板部分を製作し、それを角材の上に載せる。
・天板の大きさ、形はできるだけ元のままで使用したい。
→ 寸法は変えず、シルエットを柔らかくするために側面にのみ緩いアールを付ける。
・使い勝手が良いように、表側はキズ等を埋めて平らにして欲しい。
→ 割れや傷みを漆等で埋めて平滑に仕上げる。
・裏側はキズは残って構わない。
→ キズや傷みが拡がったり崩れたりないように処理し、自然に仕上げる。
・高さはこれまでと同じに。
→ 板の裏側に、板の反りを防ぐとともに補強の役割りもある ”反り止め” を取り付け、それと井形に組んだ ”幕板” の高さで座卓の高さを調整する。
・仕上げは拭き漆仕上げで。
(仕上げについては、キズを漆で埋めることに加え、12,3年前に、肥松に漆を塗って作った小刀のサヤが、現在とてもよい色つやになっていることもあって拭き漆仕上げをおすすめしました。)

最大の問題は、板の中心を貫く大きな割れの処理でした。

持ち上げると割れに向かって板がたわみ、板を動かす度に、2つに割れてしまうのではないかとドキドキしました。

単に割れを埋めるだけでなく、埋めることによって板に強度もでるような処理が必要でした。また、貫通してしまっている箇所をどうやって埋めるか、などなど…。

出来上がった座卓の表面
仕上がった座卓の表面

2人で知恵をしぼり、試行錯誤の末にキズを埋め、ご希望に沿うような状態にすることができました。

出来上がった座卓の裏側
出来上がった座卓の裏側

裏側に取り付けた ”反り止め” と ”幕板” は、栗材です。

長手方向の ”幕板” が脚の角材に直接載ることになります。

納品した座卓
納品した座卓

板の下に見えているのが、脚の角材です。

工房ではかなり存在感のある座卓でしたが、納品した瞬間から、落ち着いた雰囲気でお部屋にしっかりと馴染みました。さすが、元々あった場所ですね。

大人2人で移動できる重さになったことに加え、仕上がりの状態もとても喜んでいただきました。ありがとうございました。

さて、この猛暑の中、木曜日から我が家の冷蔵庫の冷蔵室がほとんど冷えなくなってしまいました。

冷凍庫は正常に機能しているのですが、どうも冷蔵室に冷気が回っていないようです。取り急ぎ、保冷の必要なものだけクーラーボックスに避難させてしのいでいましたが、何もかもが生ぬるく、暑さをひときわ厳しく感じました。

今日、メーカーの人に応急修理をしていただき、なんとか復旧しました(水曜日に部品交換の予定です)。

たった2,3日の不便でしたが、冷蔵庫のありがたさを改めて感じました。(Ku)

座卓の製作 -その1-

今週と来週の2回に分けて、先日納品した座卓についてのお話しをさせていただきたいと思います。

半年ほど前、お世話になっている岡山のギャラリーのオーナーさんを通じて、座卓のリフォームのご相談をいただきました。

『 現在座卓として使っている板がとても厚くて重く、大人4人がかりでないと動かすことができない。重すぎて不便なので、厚みを半分の2枚の板にして、1枚は再び座卓に、もう1枚はテーブルにしたい。』 というお話しでした。

テーブルは娘さんご夫婦の新居用で、脚は鉄で、というご希望です。

鉄の脚は私達ではできないので、ギャラリーのオーナーさんに、鉄を扱い、ギャラリーの内装などもされる現代アートの作家さんを紹介していただき、岡山のお客様のお宅へ伺いました。

お客様のお宅で待っていたのは、長さ180cm、巾90cm、厚さ約13cmの立派な ”肥松” の一枚板でした。

”肥松” は、松ヤニをたっぷりと含んだ松材で、水に沈むものもあるようですから、比重を 1g/cm^3 として、ざっと 200kg…。 重いはずです。

芯を含んだ部分で、大きな割れや傷みもあったため、デザイン等の詳細については、製材をして、板の状態を確認してから改めてお話しをすることになり、お客様方にも力をお借りして板をトラックに積み込み、淡路へ持ち帰りました。

製材前の状態(表)
製材前の状態(表)

製材前にまず、板の状態を確認しました。

無塗装のようですが、使い込まれた表側はとてもよい色つやになっていました。

時間をかけて松ヤニをためこんだ巨木の、根に近い部分のみが ”肥松” になるそうで、とても貴重な材料です。

製材前の状態(裏)
製材前の状態(裏)

表にも割れ目が見られますが、裏側で割れが長く拡がり、割れの周囲には朽ちているような傷みも見られます。

製材前の状態(割れの様子)
製材前の状態(割れの様子)

割れはかなり深く、さらに割れの周囲には、指でつつくとボロボロ崩れてしまうような傷みが広く拡がっていることが分かりました。

半分に割くことで、バラバラの4枚の板になってしまう可能性もあったため、お客様に状態をご報告したうえで、製材を行うことになりました。

製材所で吊られて運搬中
製材所で吊られて移動中

製材は近くの製材所にお願いしました。

平面出し
平面出し

大きな大きな帯鋸にセットされた板。

まず、反っている板を平らにするため、両面を薄くそぎ落としました。

2枚に切断中
2枚に切断中

そして、半分に。

まるで羊羹かチーズを切っているように、板が真っ直ぐ切れていきました。

さいわい、懸念していたようにバラバラになることはなく、無事に2枚の板にすることができました。

製材された板(座卓用)
製材された板(座卓用)

座卓については、「できるだけ元の形のままで」、というご希望があったため、比較的状態の良い方を使うことにしました。

製材された板(テーブル用)
製材された板(テーブル用)

テーブルについては、当初は私達のところで天板を仕上げ、別に作っていただいた鉄の脚と組み合わせる予定でしたが、板の状態も踏まえ、脚と天板を一緒に製作した方が、まとまりのあるよいものになるのではないかと考え、先の、鉄を扱う作家さん(鉄だけでなく、木やガラスなど、様々な素材を扱われるそうです)におまかせすることになりました。

先日、座卓の納品の際に出来上がったテーブルの写真を見せていただきましたが、木の大きなキズも活かして鉄と組み合わせた素敵なテーブルに仕上がっていました。

来週は、このあと、完成・納品までのご報告を予定しております。(Ku)

カブトムシ掘りました!!

週末に納品が続き、しばらく更新をお休みさせていただきました。

今回納品した作品につきましては、写真の整理をしてから順次ご紹介させて頂きたいと思っておりますので少々お待ちください。

さて、いきなり話が変わりますが、チェーンソーで薪ストーブ用の薪を切ると、結構な量の木くずが出ます。

毎年だいたい同じ場所で薪づくりの作業をするので、どんどん木くずがたまり、よい堆肥になります。この堆肥をほうっておくのはもったいないと、この春、堆肥になりかけた木くずを工房の畑の脇に移し、飛ばないようにブルーシートをかけて積み上げました。

木くずを移す際に、中にカブトムシの幼虫が何匹かいることに気が付いたのですが、以前プラスチックコンテナに移して全滅させてしまったので、今回は自然にまかせようとそのままにしておきました。

ブルーシートには隙間もあり、成虫になったらそこから勝手に出て行くだろうと思っていたのですが、カブトムシにとってはそう簡単ではなかったようです。

先週の土曜日、ブルーシートに引っかかって死んでしまっているカブトムシを発見しました。傷んだ古いブルーシートだったのですが、繊維がからまってしまったようです。かわいそうなことをしました。

そこでブルーシートを外し、中の様子も探ってみることにしました。

シャベルでそっと土を除いていくと…

穴から這い出してきたカブトムシ
穴から這い出してきたカブトムシ

いました!!

ポッカリと現れた穴から立派なオスが這い出してきました。

さらに掘り進めると…

カブトムシがいっぱい!!
カブトムシがいっぱい!!

”蛹室” というらしいのですが、成虫が入っている小さな穴が次々と現れてきました。

上の写真で赤丸で囲んだ部分が蛹室です。右下の穴のカブトムシはまさに蛹から出た直後だったようで、角の先にまだサナギの皮が付いていました。

蛹から出たばかりのカブトムシ
蛹から出たばかりのカブトムシ

いきなり明るい場所に出されて、きっと迷惑だったと思います。ごめんね。

中には環境が合わなかったのか、死んでしまっているものもいましたが、生きているものだけで、オスメス合わせて30匹くらいを掘り出しました。

掘り出したカブトムシたち
掘り出したカブトムシたち

しばらく観察してから庭の木に放してやったところ、元気のよいものはすぐに羽をひろげてどこかに飛んでいきました。

今回はカブトムシが続々と出てくるのが面白くて、興味本位で片っ端から掘り出してしまいましたが、熟睡中をたたき起こされるのが嫌なように、きっとカブトムシたちも自然に地表に出て来たいに違いありません。

来年は時期が来たらそ~っとブルーシートを外すだけにしたいと思っています。

だから、安心してまた卵を産みにおいでよ~!!(Ku)