和箪笥のリフォーム

9月末のたんばクラフトから10月末の倉敷での個展まで、” 準備 → 搬入 → 在廊 → 搬出” の繰り返しに追われた約1ヶ月の秋の展示会シーズンが終わり、ちょっと一息つきました。現在、展示会のためにお待ち頂いていた収納棚の製作に取りかかったところです。

今回は、展示会のご案内やご報告などで遅くなってしまいましたが、9月にお納めした和箪笥のリフォームのご報告をさせていただきます。

春のサンシャインホール(淡路市)での展示会をご覧いただいたはしもと住宅工房さま(淡路市志筑)から、和箪笥のリフォームのご相談を頂きました。

80年ほど前のものと思われる古い和箪笥をお持ちとのこと。現在は使用していないが、まだまだしっかりしていて使えそうなので、少し形を変えて、今年6月に完成したモデルハウスを兼ねた事務所でご使用になりたいというお話しでした。

リフォーム前の和箪笥
リフォーム前の和箪笥

早速現物を見せて頂くと、上中下と3分割できるタイプで、前面は縞黒檀張りの立派な和箪笥です。造りがしっかりしているうえにていねいに使われてきたようで、確かにまだまだ使えそうです。

リフォームのご希望は次のような内容でした。

上置き・・・玄関の飾り台として使いたい。ただし、現状のままだと奥行きがあり過ぎるので、奥行きを詰め、裏板を新たに作り直す。また玄関にふさわしいきれいな天板(杉板を着色塗装)をのせ、台輪も付ける。

下置き(2段分)・・・2階の部屋で収納に使いたい。奥行きはそのままでよいが、窓の前に置くので窓にかからないよう台輪の高さを調整する。また、天板(杉板を着色塗装)をのせる。

そのほか天板の色具合などの細かい点をご相談したうえで実際の作業に取りかかりました。

上置き、着手前-1
上置き、着手前-1

まずは、薄めた中性洗剤等を使ってクリーニングです。ほこりや汚れを取り除くだけでもかなりすっきりした感じになります。

写真には写っていませんが、上の引き戸を開けると棚と小さな引出しがあります。それも含めて後ろ側を切断し、奥行きを短くします。

下の引出しを引くと、” ファァ~ ” と優しいハーモニカの音がします。本来は引出しが開けられたことを知らせる防犯目的のようですが、” 防犯 ” とは思えないのんびりした優しい音色に笑顔が誘われます。残念ながら、今回は奥行きを詰めることで仕込んであったハーモニカが取り除かれてしまうので、リフォーム後はこの音色は出なくなってしまいます。

上置き、着手前-2
上置き、着手前-2

元が大きな箪笥で通常は上部が見えないので、天板は縁をまわしてあるだけです。この縁の内側にきれいな天板をのせることになります。

上置き、背面
上置き、背面

上置きの後ろ部分を切断して引出しを調整後、着色前の天板をのせたところです。奥行きを詰めたので、引出しも短くなります。これに裏板を付けて塗装をして仕上げます。

完成した上置き-1
リフォーム後の上置き-1

完成後の飾り台です。天板はご希望の色具合と他の部材とのバランスから杉板に漆を塗りました。棹通しの金具は側板の中央になるよう位置を調整しました。

完成した上置き-2
リフォーム後の上置き-2

新しい建物に古い家具はとてもよく合い、落ち着いた雰囲気を醸しだします。

リフォーム後の下置き部分
リフォーム後の下置き部分

こちらは下置きだった部分(2段分)です。玄関の飾り台にした上置きと同様に、漆を塗った杉の天板をのせ、窓の高さに合うよう台輪を切断して高さを調整しました。台輪の切断した残りの部分は玄関の飾り台の台輪に活用しました。

昔の木の家具はしっかりとした材料を使ってていねいに作られているので、修理やリフォームができるものがほとんどです。今回のように箪笥を分けて使ったり、本来の用途と違う利用の仕方を工夫するのも楽しいと思います。

私達の家具もいつかそんな風に修理やリフォームをされながら長く使って頂ければと願いながら、納得のいく材料でていねいに作ることを心掛けています。そんなことからも、昔の家具を使い続けるお手伝いができればと考えています。

本当はまだ使いたいけれど、古いからとか壊れているからなどとあきらめずに、まずはお気軽にご相談ください。状態によってはお力になれない場合もあると思いますが、出来る限りの知恵をしぼってがんばってみたいと思っています。(Ku)