我が家の縁の下で子育てをもくろんでいたタヌキくん達を追い出し、ようやく静かな夜を取り戻した私たち。
それがつかの間の静寂だったとは …
床下に撒いた灯油のニオイが薄れてきたある朝、買ったばかりの竹箒が縁の下に引きずり込まれているのを発見しました。
柄 が引っ掛かって途中で止まっていましたが、引っ張り出してみると、柔らかな穂先は巣作りに使われたらしく、見るも無惨なボソボソ箒になっているではありませんか!!
あんなにフサフサだったのに…。
そしてその夜から「縁の下の大騒ぎ」が再開されたのでした。
前回同様の、大きな足音、猫のような鳴き声、そして ” ジャジャジャジャ… ” という不思議な音。
きっと同じタヌキくん達が戻ったのでしょう。
道路に面した表側の縁の下換気口にはもともと、動物の侵入を防ぐための格子が取り付けられていましたし、板塀で囲まれている裏庭側も、前回の騒動で塀の隙間を塞いだはずです。
どこから入り込んでいるんだろう???
間もなくその答えが分かりました。
雨上がりの夕方、ガタッという物音で表に出てみると・・・
縁の下に続く足跡
一カ所、木が傷んで少し緩くなっていた通気口の格子が外れていました。
そして、そこに向かう足跡と、何かが土台を乗り越えて縁の下に入った跡がはっきりと残っていたのです。
大きな足跡
それにしても大きな足跡です。7~8cmもあるでしょうか。
また、5本指であることがはっきりと分かります。
念のためインターネットで動物の足跡を調べてみると、
あれれっ?
タヌキは4本指だって ???
縁の下で大騒ぎをしているのはタヌキではないの・・・?
では、何?
この界隈に出没するらしい動物の中でタヌキに似ているのはハクビシンかアライグマ。
ハクビシンもアライグマも5本指ですが、アライグマの足跡とは明らかに形が違うようです。
ハクビシンの標準的な足の大きさは数cmらしいので、ちょっと大き過ぎるような気がします。また、高い所が好きで、縁の下よりも天井裏に住みつくことが多いようです。
でもまあ、私達みたいなへそ曲がりなハクビシンだっているでしょうから、きっとハクビシンなんだろう。と、決め込んだ数日後・・・
今度は裏庭で「ガッシャ-ン」という大きな物音が!
何事かと駆け付けると、ひっくり返った植木鉢の脇に大きな動物がたたずんでいるではありませんか!!!!!
黄昏時、まだ十分に明るい庭の中で、姿形や顔つきまでがはっきりと見えました。
ハクビシンじゃあないっっっ!
今回の騒動で、タヌキ、ハクビシン、アライグマの見分け方を散々調べたので、各動物の特徴はだいたい頭に入っています。
まず、ハクビシン( 白鼻心 )の特徴である鼻すじの白い線がありませんでした。
ハクビシン→どちらかというと丸っこい顔で、色は全体的に黒っぽい
其奴→長く尖ったような顔で、全体的に白っぽい茶色
目が合い、お互いを(?)じっくり観察し合った後、其奴は板塀の際に置いてあった大きな植木鉢や甕を足場にして、悠々と塀を乗り越えて去って行きました。
何だったんだ 、 アイツは・・・
そこで思い出したのが、動物の見分け方の中にあった「アナグマ」なるもの。でも、ご近所のどなたからもそんな名前を聞いたことがありません。
「アナグマ」の特徴を調べてみると、今回の騒動での様々な出来事や証拠がことごとく一致することが分かりました。
名前の通り地下が好き(通常は地面に穴を掘って巣をつくるようです)。5本指の幅広の足跡。姿形。色。巣作りのために植物をちぎって運ぶこと。タヌキと同じように死んだふりをすること。タヌキとよく間違えられること。
そしてあの ” ジャジャジャジャ… ” という不思議な音は、アナグマの求愛行動での独特の鳴き声ということも分かりました。
全て合点がいきました。
縁の下で大騒ぎをしていたのは「アナグマ」だったのです。
ご近所の方々のお話に「アナグマ」が出てこないのは、タヌキと見間違えられているからかもしれません。
その後、アナグマ達が騒ぐたびに床を叩いて大きな音をたてたり、縁の下をライトで照らしたり、ニオイのキツイ防虫剤を撒いたりと、私たちのできる限りの嫌がらせを繰り返しているうちに子育ての時期が過ぎたのか、大騒ぎは無くなりました。
でも・・・
先日、足跡があったのとは異なる通気口に新たな痕跡を見つけました(入り込まれた通気口はガッチリと塞ぎました)。
通気口のツメ跡
内側から付けられたと分かる爪跡です。
アナグマは、巣の出入り口を複数つくるそうです。
私たちが気づいていないどこかのすき間から入り込んだアナグマが、ここを出口にしようとしたのでしょう。
よく観察してみると、木の棒には古い爪跡が他にもたくさん残っていました。
今も時々、縁の下でゴソゴソと音がすることがあります。きっとこの家の縁の下は、昔からアナグマくんたちのお気に入りの場所なのでしょう。
アナグマくんにしてみれば、私たちの方が新参者ですから、「天井裏がうるさくて・・・」というところでしょうか。
夜中に騒いだりせず、トイレも山の中かどこかで済ませてもらえれば、共同生活に異論はないのですが … 。
(Ku)